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【読書記録】『コンビニ人間』を読んで考えた、「普通」とはなんだろう?

最近、BSテレ東で放送されている番組『あの本、読みました?』に、作家の村田沙耶香さんが出演されているのを観ました。


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以前からちょっと気になっていた作家さんだったのですが、インタビューで話す穏やかな口調と芯のある視点に惹かれて、「この人の本、読んでみたいな」と思ったのがきっかけです。

そして偶然にも、図書館でふと新刊返却棚をのぞいたところ、芥川賞受賞作『コンビニ人間』が、まさに今返されたばかりのタイミングで置かれていました。
これは運命かも…と思い、すぐに借りて読み始めました。

村田沙耶香さんは、1979年生まれの日本の小説家で、現代社会の「普通」や「常識」に疑問を投げかける独自の作風で知られています。彼女の作品は、ジェンダー、家族、セックス、出産、社会的役割などをテーマに、人間の本質や社会の枠組みを鋭く描き出しています。そのユニークな視点と大胆な発想は、国内外で高く評価されています。

タイトルからは想像できなかった重さ

コンビニ人間」というタイトルを見たとき、私は正直もっとライトな内容を想像していました。
コンビニで働く人のエッセイ風の物語とか、ちょっとしたユーモアが交じった短編集とか。そんなふうに思っていたのです。

でも、読み進めるうちに、その期待はいい意味で裏切られました。
そこに描かれていたのは、社会の中で“普通”であろうとすることに必死になって、自分を押し殺して生きる一人の女性の姿でした。
そしてそれは、読み手である自分にも、まっすぐ突き刺さってくるテーマでした。

「普通」って誰が決めるの?

主人公・古倉恵子は、18年間ずっとコンビニでアルバイトをして生計を立てている36歳の女性です。
コンビニのマニュアル通りに振る舞い、日々のルーチンを守りながら生きることに安心感を得ている彼女は、ある意味で「社会に順応している人」です。

けれど、世間から見れば、30代後半で結婚もせず、正社員でもなく、長年アルバイトを続けているというだけで、「普通じゃない人」として見られてしまう。
彼女の周囲の人たちは、善意とも無関心とも取れる態度で「もっとまともな人生を」「せめて誰かと結婚すれば」というプレッシャーをかけてきます。

その姿を見て、「ああ、自分も気づかないうちに“普通であること”にこだわって生きてきたのかもしれない」と、はっとさせられました。

ドロドロしてるけど、リアル

一見、淡々とした文体で進む物語ですが、その裏側には非常にドロドロとした、人間の本音や生きづらさが詰まっていました。

たとえば、「就職しないの?」「結婚しないの?」といった世間の“正論”。
それに反論しようものなら、「ひねくれてる」「可哀想な人」とレッテルを貼られる。
何かを選ぶたびに、「その選択は世間的に正しいのかどうか」を気にしなければならない息苦しさ。

これは決してフィクションの中だけの話ではなく、現代を生きる多くの人が無意識に抱えているモヤモヤなのではないかと思いました。
特に女性の場合は、「年齢」「結婚」「出産」など、人生に関する“締め切り”があらかじめ設定されているような風潮があって、それを外れると「逸脱者」扱いされてしまう。
そのプレッシャーが、静かに、でも確実に心をすり減らしていく。

自分らしさってなんだろう?

この小説を読み終えて一番考えたのは、「自分らしさ」ってどこにあるんだろう、ということです。

世間の目を気にして、周囲に合わせて、役割を演じながら生きるのが“普通”なら、そこに「本当の自分」はいるのか?
むしろ、自分が心地よいと思える生き方を貫くことこそが、自分らしさなのでは?

恵子さんの生き方を、私は最初「極端だな」と思って読み始めたのですが、読了後には「でも、こういう生き方も“あり”だよな」と心から思えました。

おわりに:気軽に手にとって、深く刺さる

コンビニ人間』は、ページ数こそそれほど多くないものの、読後の余韻がとても長く残る作品でした。
読む前と読んだ後では、「普通」という言葉の意味が、ほんの少し変わって見えます。

タイトルに惹かれて手に取った本が、思いもよらず深いところに連れていってくれる。
そんな読書体験ができたことに、ちょっとした感謝を感じました。

次は、村田沙耶香さんの他の作品も読んでみたいと思います。
今度はどんな“違和感”や“問い”に出会えるのか、楽しみです。


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村田沙耶香さんの最新作『世界99』は、2025年3月5日に集英社から上下巻同時に刊行されました。本作は、3年以上にわたる著者初の長期連載を経て書籍化された、全世界待望のディストピア大長編です。村田さんの現時点での集大成ともいえる作品で、国内外で大きな注目を集めています。