
有事といったら、織田裕二しか思いつかない。
そんな軽口を叩きたくなるくらい、相場がざわついている。
中東では イラン を巡る緊張が高まり、
地政学リスクという言葉が現実味を帯びてきた。
そして為替は――
ついに1ドル160円。
「160円がきたーーー!」
目薬のCMみたいに叫びたくなるインパクトだ。
でも、ここでひとつ違和感がある。
本来なら、こういう“有事”の場面では円が買われるはずだった。
いわゆる「有事の円買い」。
しかし現実は逆だ。
円は上がらない。むしろ売られている。
いったい何が起きているのか。
まず大きいのは、「逃げ場の変化」だ。
かつて世界の投資家は、不安が高まると円に資金を移していた。
日本は経常黒字国であり、対外資産も多く、通貨としての信頼が高かったからだ。
ところが今、その役割はドルにシフトしている。
ドルは世界の基軸通貨であり、
エネルギー取引や国際決済の中心にある。
加えて、アメリカは世界最大の経済規模と軍事力を持つ国だ。
「困ったらドル」という構図は、むしろ以前より強まっている。
つまり、有事のときに選ばれる通貨が、
円からドルへと変わってきている。
次に見逃せないのが、日本の弱点だ。
中東情勢が緊迫すると、原油価格は上がりやすい。
ここで効いてくるのが、日本が資源輸入国であるという現実だ。
原油が上がれば、輸入コストが増える。
貿易収支は悪化し、円は売られやすくなる。
以前は「有事=円高」という流れがあったが、
今は「有事=資源高→円安」という逆の圧力も同時に働く。
これが、円が素直に買われない理由のひとつだ。
そして決定的なのが、日米の金利差である。
アメリカは高金利。
日本は低金利。
この差は、単なる数字以上に重い意味を持つ。
投資家にとっては、
「どこにお金を置けば増えるか」が常に重要だ。
いくら安全でも、利回りが低ければ資金は集まりにくい。
逆に、安全で利回りもあるなら、そこに資金が集中する。
今のドルは、まさにその状態だ。
有事で多少リスクが高まっても、
金利差がある限り、資金はドルに流れやすい。
円はその裏で、
キャリートレードの資金源として売られやすい立場にある。
こうして見ると、今回の動きは一時的な異常ではない。
むしろ、
・逃げ場が円からドルへ変わった
・日本は資源高に弱い構造を持つ
・金利差が資金の流れを決定づける
この3つが重なった「今の正常」とも言える。
1ドル160円という数字は、確かにインパクトがある。
だが本質はそこではない。
本当に大きな変化は、
「円の立ち位置が変わった」という点にある。
有事でも円は必ずしも買われない。
それどころか、状況によっては売られる。
この現実を受け入れることが、
これからの相場を見る上で重要になってくる。
有事の織田裕二です。
そう言いたくなる場面はこれからも来るだろう。
でも、そのとき主役になるのは、もう円じゃないのかもしれない。
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